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第三章 帝国主義と世界

19世紀、鉄道と蒸気船の普及によって、産業の中心が軽工業から重工業に転換していった。それに伴い、巨大な資本を持つ大企業が市場を独占し、多くの社会問題を生み出した。市場の独占によって起きた社会問題を解決するため、国家が経済に介入するようになる。大企業の余剰資本を世界各地の植民地に振り向け、その利益で国内の改革を行ったのである。このように、世界各地に支配圏を広げようとする動きを、帝国主義と呼ぶ。
イギリスが帝国主義政策を進め、植民地を拡大していく一方、フランスやアメリカなども植民地の拡大に乗り出していた。列強国による世界の分割が始まったのである。列強国は軍事力や資金力を駆使し、世界中のほとんどの地域に支配圏を拡大していった。有益な地域を植民地にして世界の分割を終えると、列強国間で植民地の奪い合いがはじまり、世界大戦につながっていく。

ベンジャミン・ディズレーリ

二大政党の1つ、保守党の党首であり、小説家でもあった人物。植民相のジョセフ・チェンバレンとともに帝国主義政策を推進し、ヴィクトリア朝の繁栄を支えた。
ディズレーリは1868年と1874~1880年の二度、首相を務めた。外交面では、スエズ運河株式の買収、インドの半植民地化、露土戦争のロシア南下阻止、キプロス島の獲得、第二次アフガン戦争の勝利などを果たし、イギリスの繁栄を支えた。内政面では社会問題を解決するため、社会政策に力を入れていた。工場法の改正や公衆衛生法などを制定し、労働者を保護する政策を進め、労働者たちから支持を得たのである。
小説家としても成功を収めており、貴族社会について書いた「ロゼアー」や自身をモデルにした「エンディミオン」など、ベストセラーを出版している。

独占資本

イングランド銀行( Bank of England )

銀行資本(銀行)と産業資本(営利企業)が結びついて生まれた、少数の大企業群のこと。この企業群は、国内で製品の価格を自由に設定でき、国外に輸出を行うことで大きな利益を得ていた。独占資本が形成されると市場が独占され、貧富の差の拡大、大量の失業者、物価の高騰、雇用の停滞などの社会問題を生み出し、経済の停滞を招く。これらの社会問題を解決するため、国家が経済に介入を始めたことが、帝国主義につながっていく。

独占資本の形成

19世紀、産業の中心が繊維などの軽工業から、製鉄・造船などの重工業に転換し始める。軽工業と異なり、重工業では初期設備の用意に大金が必要だった。資金調達のため、一部の企業と銀行が結びつき、独占資本が形成されたのである。一方で、銀行から融資を受けられなかった企業や、資金のない中小企業は重工業への転換に失敗する。これらの企業は次々と倒産・買収され、結果として少数の大企業が市場を独占していった。

植民地について

ダーウィンの提唱した進化論が、帝国主義を正当化するために利用された。

帝国主義における植民地拡大の動きは、「自国の文化・文明を野蛮で未発達な地域にもたらす」という思想により、列強各国で正当化されていた。ダーウィンの進化論を社会に当てはめた、白人は有色民族より優れるという考え方である。
そのため、植民地では現地の民族に重い税金が課され、一方的な搾取が行われていた。この一方的な政策に対する抵抗運動が各地で起こり、20世紀の独立運動につながっていく。

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